フランチャイズ本部には、加盟契約の前に決められた項目を書面で開示する法的義務があります。これが「法定開示書面」です。
ただしこの義務が及ぶのは一部の業種だけで、美容サロンや整体、清掃、買取といったサービス業のFCは法律上の対象外です。フランチャイズ図鑑で扱っている110ブランドの多くが、実はこちらに当たります。
この記事では、法定開示書面に何が書かれるのか、そして対象外のFCを検討するときに何を代わりに確認すべきかを整理します。
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根拠となる法律|中小小売商業振興法
法定開示書面の根拠は中小小売商業振興法 第11条です。本部は加盟契約の締結前に、法定の事項を記載した書面を交付し、説明しなければなりません。
義務に違反した場合、主務大臣による勧告が行われ、勧告に従わないときはその事実が公表されます。
対象になるのは「特定連鎖化事業」
| 内容 | |
|---|---|
| 対象 | 特定連鎖化事業(本部が加盟店に商品を卸す、または仕入先を指定する小売業・飲食業)。コンビニエンスストア、飲食店などが典型 |
| 対象外 | 美容院などのサービス業のFCは「連鎖化事業」に該当せず、法律上の開示義務はない |
ここが最も重要な点です。フランチャイズ図鑑で扱っているブランドのうち、エステ・整体・清掃・買取・訪問サービス・学習塾などの多くは、法定開示書面の交付義務がありません。
義務がない=情報を出してくれないという意味ではありませんが、「法律で守られていない」という前提で自衛する必要があります。
法人で加盟するなら
FC本部の多くは法人での加盟を条件にしています。会社設立には登録免許税などの実費がかかりますが、サービスの利用で実費負担を抑えられる選択肢もあります。
法定開示書面に書かれる主な項目
施行規則で定められている開示事項は多岐にわたります。主なものを整理します。
Ⅰ. 本部の実態が分かる項目
- 本部事業者の名称・住所、従業員数、役員の役職名・氏名
- 資本金・出資総額、主要株主
- 子会社の情報
- 直近3事業年度の財務諸表
- 事業を開始した時期
Ⅱ. チェーンの健全性が分かる項目
- 直近3事業年度の加盟店数の推移
- 直近5事業年度の訴訟件数
この2項目は、本部の資料やWebサイトにはまず載りません。加盟店数が減っているチェーンなのか、訴訟が多い本部なのかが分かる唯一の資料です。法定開示書面を読む最大の価値はここにあります。
Ⅲ. お金に関する項目
- 加盟金・保証金の額と返還の有無
- 定期的に徴収する金銭(ロイヤリティ等)の額・算定方法・徴収時期
- 売上金の送金条件
- 本部による融資あっせんの利率
- 債権債務を相殺する場合の利息
- 違約金の規定
Ⅳ. 契約内容に関する項目
- 使用させる商標・商号
- 経営指導の内容・方法・回数
- 商品の販売条件
- 営業時間・営業日
- 競合店舗に関する規定の有無(テリトリー権)
- 契約終了後の競業禁止・秘密保持の規定
- 加盟者に課される特別の義務
- 契約期間、更新・解除の条件
2021年改正で追加された項目
2021年4月に施行規則が改正され、2022年4月から「加盟者の店舗のうち、周辺の地域の人口、交通量その他の立地条件が類似するものの直近の三事業年度の収支に関する事項」の説明が追加されました。
つまり「自分が出す店と条件の似た既存店が、実際にいくら儲かっているか」を示す必要があるということです。モデル収支ではなく実績を確認できる、加盟者にとって極めて重要な改正です。
開業後、この数字を管理するのはオーナー自身です
本部が示すPLはあくまでモデルケースです。実際に原価率や人件費率が計画どおりに収まっているかを毎月確認し、ズレの原因を潰していくのは加盟店側の仕事になります。開業前の事業計画づくりから決算まで相談できる税理士を見つけておくと、数字の異変に早く気づけます。
対象外のFCを検討するときの自衛策
サービス業FCには法律上の開示義務がありません。それでも次の2つの枠組みがあります。
① JFAの開示自主基準
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は、中小小売商業振興法の適用対象とならない本部も対象に、独自の開示自主基準を定めています。
会員社は「フランチャイズ契約の要点と概説」を作成し、加盟希望者に事前に説明・配布することが求められ、JFAへの提出も義務付けられています。
検討中の本部がJFA会員かどうかを確認し、会員ならこの書面を求めてください。
② 公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドライン
公正取引委員会は「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」を公表しており、2021年4月に改正されています。業種を問わず適用される考え方なので、サービス業FCにも及びます。
③ 法定項目を自分で聞く
最も確実な方法です。法律の対象外でも、聞くことは自由です。特にこの3つは必ず聞いてください。
- 直近3年の加盟店数の推移(増えているか、減っているか)
- 直近5年の訴訟件数
- 立地条件が類似する既存店の直近3年の収支
法定開示書面の対象なら義務として出てくる情報です。対象外の本部でも、この3つにきちんと答えるかどうかで、その本部の姿勢がはっきり分かります。
法定開示書面を受け取ったら見る順番
- 加盟店数の推移——減っているなら理由を聞く。最優先で見る項目です
- 訴訟件数——件数そのものより、同種の訴訟が続いていないか
- 類似店舗の収支——モデル収支との差を確認する
- 違約金と契約終了の条件——やめるときに何が起きるか
- 財務諸表——本部自体が存続できるか
多くの人は加盟金やロイヤリティから読み始めますが、それは募集資料にも書いてあります。法定開示書面でしか分からないのは、1〜3の項目です。
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まとめ
- 法定開示書面の義務は小売業・飲食業(特定連鎖化事業)が対象。サービス業FCは対象外
- 書面でしか分からないのは加盟店数の推移・訴訟件数・類似店の実績収支
- 対象外の本部でも、この3つは自分から聞ける
- 答え方そのものが、本部の透明性を測る材料になる
法律が守ってくれる範囲は限られています。守られていない領域こそ、自分で確認する価値があります。
※本記事は中小小売商業振興法および関連ガイドラインの一般的な説明です。個別の契約が法の対象になるかどうかの判断や、具体的なトラブルについては弁護士等の専門家にご相談ください。
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